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おひとり様の旅立ちに


お一人暮らしの女性、高齢者というにはまだ若いかもしれない70代の方がお一人こたつで亡くなっていたという。身寄りは無いという。

黙々と片付けるスタッフ。テレビもエアコンもないアパート。テレビは、どうやら「地デジ難民」とな

り諦めた様子。未開封のデジタルチューナーと山積みの荷物の中に小さなブラウン管テレビ。

現金もあった。一万円札が複数の封筒の中に折りたたまれていたのを私がみつけた。たぶん、この感じは一つ一つ封筒をみる作業を行わない業者は見逃していただろう。うちのスタッフは私でなくてもきっとみつけただろうと思う。

被保護者なのだから、ご自分のために使えばよかったのに。

この現金、どうすべき? いつもならご遺族様にお渡しするが。      


警察にも相談したが、家の中の現金は拾得物としては認められないと。賃貸物件を管理する不動産会社は、「未納家賃は精算しますが、残りは、かんどうサービスさんにお任せします」。

私は、伊東市の社会福祉行政の保護下にあったこの女性の現金なので、伊東市に戻そうと、市への寄付を考えていた。


作業中に、お寺さんからの郵便物が何通も出てきたので、そのお寺さんにお札やご本尊・ご位牌のお焚き上げの相談に行った。お寺は市役所の隣。お焚き上げが不可ならばそのまま寄付のつもり。

すると、お名前から檀家さんであったことが分かった。

「残念ながら、〇〇年間、檀家さんの年会費である護持会費が収められていないんです」と、檀家さんの帳面を見せてくれた。

では、これこれこういうわけで、現金があります、と事情を説明。

未納金の金額は、不思議なことに、手持ちの現金とぴったり。


それでは、市に寄付するのではなく、こちらに納めましょう。お焚き上げもお願いします。

まるで、亡くなった方が全てを計算していたかのように、ぴったりの金額で、お寺への未納金が発見現金で精算された。


お亡くなりになった方にはもちろん、私は生前お会いしたことは無い。

お若い頃の写真を一枚拝見しただけ。

それでも、その方が なんだか私に「貫洞さん、ありがとうね」と言ってくれたような気がした。


ご冥福をお祈りします。


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